• 白井純平

建築の旅 05カルロス・ラモス記念館(ポルト大学)

最終更新: 2019年6月27日

●カルロス・ラモス記念館●

当プロジェクトはアルヴァロ・シザ(以下シザ)の作品群の中でも個性的なプロジェクト一つです。1985年から1986年に計画され、2011年に建築学科のスタジオとして改修されました。

カルロス・ラモン記念館はポルト大学建築学部の施設群の一部のプロジェクトです。カルロス・ラモンはポルト大学の元学長の一人で、1952年から1960年代にかけて大学運営に貢献された方です。特に建築学部の門戸を開くことに力を注ぎ、ポルト大学建築学部の発展に大きく貢献をされたそうです。

当プロジェクトは当時計画中だったポルト大学建築における教室不足の懸念を解消するために計画されました。


カルロス・ラモン記念館は、南側に配置されている既存建築とその庭に育つ木々を尊重し、当時表から見ることができない敷地奥に計画されました。おおよそ敷地中央から軸線を引き、中庭を形成するように配棟されています。

またプロジェクト自身にも中庭空間を形成するように凹型の平面計画となっています。このプロジェクトでは凹型の平面系が少し歪んでいたり、左右が非対称のデザインとなっていることに注目できます。

平面形状や外形が少し作為的に焦点が歪められているため、俯瞰的にみると凹型の対象系のように感じる建物を、実際に空間体験をすると全くの非対称だと感じさせるデザインとなっています。しかしどこかまとまりを感じるのは、プロジェクト中庭空間に開けた大きな連続窓に一定のリズムと均質感をつくる同じ詳細部のデザインが繰り返し導入されているからかもしれません。


このプロジェクトのエントランスは敷地の奥にあり、とても狭い木々の間を通った先にあります。エントランスは凹型の外形に対し小さな固まりが差し込まれたデザインとなっています。エントランスの扉はハメゴロシの窓と一体的にデザインされ、左右対称となっています。エントランス内部には2階への階段があり、この空間も完全な対称形です。他の外部の非対称性と比べると、そのギャップに驚きます。


内部空間は間仕切りのない一体的な空間です。ただエントランスホールとの曲面をつくる間仕切り壁が驚くほど狭い通路を形成します。

建築の形による内部空間への影響を教えるためなのか、まさかの反面教師をシザが行ったのか、あるいはこの狭さが素敵なのか、学生たちは体感によりそれぞれ学ぶのでしょう。

(撮影し損ねましたが、中庭を正対するように外を見ると、建物の軸が不思議な歪みを持っていることがよくわかり、どこか建物に有機的な自由さを感じました。シザのもつ自然感といえるかもしれません。)

庭園に面する外観と中庭に面する外観の開口部のデザインをみてみます。外に面する開口部は白い壁の中に窓や扉枠が収まり、「壁に穴が開いて窓がつくられた」ように感じます。一方で中庭側の開口に関しては鋼製の窓枠が細い板の組み合わせにより構成され、シャープな現代的な窓のデザインを意図としたように感じます。


個人的に顔のようにデザインされた窓はちょっとお茶目すぎではないかと思いましたw



このプロジェクトについてラファエル・モネオは「現代建築家8人の設計戦略と理論の探求」というハーバード大学大学院建築学科(GSD)の講義内容をまとめた本に以下のように記しています。「シザは、両義性を巧みに利用しています。かたちはとてもシンプルで単純に見えますが、人々はその中に不安定さを認識し、その結果魅惑的でユニークなフォルムを作り出しています」。シザはこのプロジェクトにおいて初期作品にみられるシステマティックな建築から、叙情性を感じるような建築への挑戦をしたのかもしれません。




注意:当ブログはリアルタイムの記録をしているものではありません。


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