• 白井純平

建築の旅 04セラルベシュ現代美術館

●セラルベシュ現代美術館●

当美術館はアルヴァロ・シザ(以下シザ)の代表作品の一つです。1991年頃から計画が開始され、1999年に完成しました。ポルト市内にあるセラルベシュ庭園内に設立された現代美術の美術館です。

ポルト市内にセラルベシュ通りに面する邸宅と庭園があり、かつて VizelaのCarlos Alberto Cabral伯爵がポルト市郊外に1925に不動産取得し、家族のための夏の別荘地として利用されていました。1944年まで幾度かにわたり建築、造園を行い現在の庭園まで発展しました。1950に所有者が変わったものの、伯爵が作り上げたアールデコ調の邸宅・庭園は全容を変えず保全されていました。1986年に国有地となった後、市民生活の基盤とするべく公園は一般開放されました。 当時の文化大臣であったTeresa Patrício Gouveiaは国有化に伴い、当時のポルトガルの美術を支えていた現代美術協会等の協力もあり、国立現代美術センターの計画予定地として誘致しました。1989年にセラルベシュ財団を立ち上げ、1991年3月にシザに設計委託をしました。


エントランスゲートは街路樹に隠れるように計画され少しひっそりとしていて、美術館より家の門のようなデザインです。ポルトガル人のサウダージ(郷愁)なのでしょうか。どことなくシザらしい一面を感じます。ゲートを通ると財団関係者名が彫られた記念碑と美術館まで誘引する庇屋根が続きます。

この美術館はエントランスを抜けると壁や(壁とつながっている)庇屋根に明確な意図をもった角度が振られていることに気づきます。そのずれは入口を通ったときから門とつながっている誘導的感覚と、公園内の奥に足を進めて施設内に進み門から離れている感覚を両立させる効果を生みます。庇屋根が折れ曲がった門のようなデザインを抜けると中庭が広がります。この庭ではアートイベントや子供たちを対象とした植物・芸述のワークショップなどが催されていました。そのまま庇屋根に導かれて進むとチケット売り場の建屋が現れ、庇屋根が少しかかっているためか、目が留まります。このチケット売り場は美術館ではなく隣接するオーディトリウムのチケットセンターです。



チケットセンターを抜けると美術館とオーディトリウムの間にある砂の中庭が見えてきます。砂の中庭は美術館本館とオーディトリウムの建物軸が交差する位置にシンボルツリーが生えています(前述の航空写真の図を参照)。オーディトリウムのアトリウムの入り口にもかなり狭い角度で壁がつながり、建物全体の幾何学デザインを感じることができます。


施設の屋根はフラットに水平基調のデザインですが、地面と設置する基壇部は計画地の起伏に合わせて様々なデザインが施されています。入口と施設裏側はおよそ9mの高低差があり、その間に内部空間の展示室が組み合わせています。また、高さの違いを活用した見晴らし窓やブリッジなどにより明るく開放的な空間を計画する一方で、構造部の裏側に小さな食堂などを配置することで落ち着きのある空間も計画しています。シザの起伏さを活かしたデザインです。


美術館に入るとチケットセンターがあり、大きな正方形の窓により明るく空間となっています。隣接するお土産センターの巨大な覗き窓も正方形で統一感のあるデザインとなっています。後述するホワイエを介し、荷物を預かってもらうクロークもあります。これらの美術館の必要設備の空間は天井が低く、施設規模を考えると少し窮屈な印象があります。

しかし、中央のホワイエ空間はエントランスの天井高差により、とても開放的な印象を受けます。またトップライトはポルトの強い日差しとは思えない、やさしい光が降り注ぎ、異世界に足を踏み入れたような印象もうけます。

ただ実は天井高さをかなりおさえた設計です。2階に足を進めるとより顕著に感じます。


でもシザ建築が好きな人はこの後の展示空間の開放感に期待で胸が高鳴るのです。美術館には珍しく、大開口の窓を有する展示室です。通常紫外線等を避けるため窓を大きく作らないのが鉄則なのですが、ここでは中庭も芸術作品(あるいは建築も?)とも主張するかのように大きく窓を計画しています。外から見ても窓はシンプルに作られ、建物のデザインを損なわない計画となっています。



シザの建築は主に自然光を取り扱う空間装置だといえます。ほとんどの居室はトップライトや大きな窓、あるいはハイサイドライトなど建築の開口部を活用した採光がほとんどです。実際これまでご紹介してきたデザインではほとんど照明機器を目にすることはありませんでした。たださすがに美術館となると暗い部屋もあります。シザの取り扱う照明機器はめずらしいのでちょっとご紹介します。暗い無窓の展示室にV字断面の照明機器がありました。シザは天井に光をあてる間接照明を用意していました。この照明を見ると照明本体(電球や蛍光灯など)はどの角度からも見ることはできません。また長い蛍光灯を二本仕込んでいると思われますが、配置感覚がよいためきれいな光が天井にあたっています。



シザが白や落ち着いたトーンの石を扱うことが多いとわかります。詳細にまでとてもこだわり、目地を通すデザインや部材の中央線へのこだわりだったり、素材の厚み差に室名サインを設置したり、階段の部材の取合いがユニークだったり、いろいろな個性を発見できます。


セラルベシュ現代美術館を視察すると、革命の15年後にこのような巨大な美術館を計画するほどにまで復興したのかと驚きます。(ボウサの集合住宅参照)素材や工法を考えても決して安価で安易なものではありません。まして、建設後25年ほど経つ今でも学びが多くあり、世界各国から観光客や建築従事者が訪れています。これから自分の設計する建物もこのような立派な建築に負けないよう、志を高くもっていきたいと思います。ぜひポルトへ行かれる際は庭園・芸術・建築が同時に楽しめるセラルベシュ現代美術館へ足を運ばれてはいかがでしょうか。


注意:当ブログはリアルタイムの記録をしているものではありません。


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