• 白井純平

建築の旅 02ボウサの集合住宅

●ボウサの集合住宅●

ボウサの集合住宅はアルヴァロ・シザ(以下シザ)の代表作品の一つです。1973年頃から計画が開始され、一期工事が竣工をしたのは1977年で(文献によって諸説あり)、全体計画が完成したのは2006年になります。ヨーロッパの建築ではよく予算の関係上、いくつかの分期計画により工事計画を進めることは多々あります。この建築はSAAL(Serviço de Apoio Ambulatório Local, 英: service for local mobile support)計画の一環として立ち上がった市民への住宅供給計画です。1974年はカーネーション革命がリスボンで実行されましたが、その背景には極端な住宅不足がありました。シザはこの社会背景の中、住宅計画に取り組むことになりました。



複数の集合住宅が立ち並ぶ計画で30年という年月にわたり計画が長期化したにも関わらず、全体計画の空間像がブレずにまとまりを感じることにシザの強い信念を感じます。


各住戸の入り口はすべて公園のような広場に面しており、住民の交流が促進されるように考えられたプランニングです。ただ計画当初の時代背景を考えると、治安の悪化を避けるために開放的な住戸へのアプローチを計画し、地域住民同士の監視の目を光らせるような計画も同時に意図としたのではないかと思います。


その一方で駅からの目線を遮断する大きな目隠しの壁、共用施設群や貫通通路の死角など一定のプライバシーへの配慮も感じられます。


共用施設群は個性的な形状をしていますが、交差点正面の円形の建物は広場と交差点を繋げる効果があります。住宅棟の入り口広場が住民専用でなく、街区全体の共用の公園でもあり、利用者の足を進める誘引効果です。

隣地の街並みと並ぶ外壁部分は、古都ポルトの窓廻りのリズム感を感じさせるデザインです。古都のエッセンスを取り入れていることで、街並みと個性的な表情をもつ共用施設との連続感を与える外観計画となっています。


低コストな開発計画に納めるため、デザインが反復し同じつくりが繰り返されるように設計されています。それでも飽きを感じさせないのは配列複製されたデザインに独特のリズムがあるためでしょう。

強いポルトガルの日差しを受け止め、屋内に適切な採光効果を生み出すため、窓は細長く比較的小さいものが多いです。ただ、2階住戸用玄関入口のために設けられた外部廊下が庇のように設置されている部分の1階窓に関しては縦型の連続窓も設置されています。もちろんこのような開口部についても大きく建具を用いず、小さいものを連続するように設置し、同一規格のものを多く採用することで低コストなプロジェクトとなるように工夫されています。



ほぼ計画の中央に位置する広場には劇場広場もあります。ステージ状に立ち上がるスペースは住戸エントランスがなく、市場などのイベントなどにも対応できそうです。



限られた時間の中でしたが、スケッチしながら空間観察をしました

当時のような厳しい時代背景の中、低コストプロジェクトにおいては竣工時の状態を維持し修繕を行い続ける施設管理費を用意されていることはレアケースです。ですがシザの建築は仮に修繕維持が理想通りにならないとしても、時間や利用状況による変化に対して寛容なデザインだと感じます。初期のコンセプトを貫いても古さを感じさせないシザのデザインは脱帽ものです。

シザがプロジェクトのかかえる問題を見抜いたのでしょう。私には住宅供給を目的としたプロジェクトである一方で、住宅供給不足が解消された後のことを考えているようにも見えます。広場は視察当日に若者たちの溜まり場としても利用されていました。建築の設計時に将来の環境変化にも適応できるように配慮していることはとても大事です。都市と建築の関係を捉えることはプロジェクトに不変(あるいは時代の変化に耐えうる)の価値を与えるのだと思います。



注意:当ブログはリアルタイムの記録をしているものではありません。


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