4.住宅の発注方式とメリットデメリット

注文住宅にはたくさん選択肢があります。注文住宅をご依頼されるには「ハウスメーカー」、「工務店」、「設計事務所」へお問合せする方法が一般的です。ここではそれぞれの基本的な業務範囲と得意とする内容をご紹介します。その特徴をご紹介するにあたり、まずは土地がどのようにできているかを考えます。また、以下の解説には代表的な方式を解説しているため、ご依頼される際いろいろ調整することで細かい違いが生じるかと思います。

4-1 宅地開発と家づくりまでの専門業種

土地は大小あり、様々な形状があります。一つとして全く同じものはなく、周辺環境によって条件も多様です。これら土地の区画は都市計画事務所(都市計画コンサルタント、土地家屋調査士、行政書士等)により整理されます。一般的に150㎡から200㎡程度の土地が多く見受けられます。これらの土地を不動産会社が土地取引を行います。土地取得に伴い土地利用に応じた他店のの設計を設計事務所が行います。その後施工する工務店等が設計図をもとに施工することで家づくりは完成します。

​図:土地の整備から住宅の工事までの流れ

これらの宅地開発から家づくりまで一連の業種の中で、建て主が関係する業種は「土地取引」「設計」「工事」の3つになります。土地の売買、建築設計はそれぞれ国家資格を有する人のみが認可されている独占業務になり、また建物工事は建設業の許可を受けた会社*にのみ行える専門の業務となります。

4-2 設計施工一括発注方式の誕生

​不動産屋、設計事務所、工務店との3度の専門的契約を要する家づくりは建て主への初期負担が多いことから、設計と施工を一括で請け負う設計施工発注方式が誕生しました。これにより不動産屋、設計施工請負会社等との2度の契約で済む家づくりが誕生しました。これが一般的な「ハウスメーカー」や、設計と施工をまとめて請け負う「工務店」の家づくりとなります。

​図:設計施工発注方式の業務範囲

建て主の所有する土地に、どのような家が建設可能か考え、予算を考慮しつつ最も理想的な家を考えることが「設計」の業務となります。その内容をもとに工事の見積をとり、建設をすることが「工事」の業務です。その2つをまとめることで建て主が依頼しやすい方式が設計施工発注方式であり、現在はハウスメーカーを筆頭に多くの住宅がこの方式により建てられています。

​図:2つの代表的な発注方式の契約者相関図

元来、設計と施工は別々の業務であり、現代の選択肢としてまとめて発注をすることができるようになりました。業務発注の手間が少なくなることは建て主にとってはとても良いことだと思います。しかし、そもそも日本国での法律では分離発注であることが基本となっています。法律に抵触せず発注が可能な設計施工一括発注方式が人気となるメリットの背景には別の形での建て主への負担があります。

4-3 設計施工一括発注方式について

建築基準法第五条の六第一項「前略…建築物の工事は…中略…建築士の設計によらなければすることができない」とあります。建築士法により一級、二級、木造建築士のそれぞれの設計可能な建物規模に応じた工事は、必ず該当する建築士による設計でなくてはなりません。また建築基準法第五条の六第四項「建築主は第一項に規定する工事をする場合においては…中略…建築士である工事監理者を定めなければならない」とあります。法律上建築主(建て主)は工事のときに工事監理(建築士)を必要とします。建て主自身が該当する建築士でなければ、必ず該当する建築士に監理を依頼しなければなりません。
上記の法律により建て主は設計施工会社に一括して設計と工事をお願いする場合は設計・監理契約と工事請負契約をそれぞれ交わすことが一般的です。これには設計施工会社が「建築士事務所登録」をしている必要があり、建物規模に応じた設計・監理が可能な建築士を有する事務所でないといけません。また建築士法第24条の7により、設計監理の契約をする際は建築士事務所に所属している建築士による重要事項説明が義務付けられています。
この条件を満たしている場合、設計施工一括発注方式(実際は二段階契約)が可能となります。

​図:設計施工一括方式の契約体系図

設計施工一括発注方式は実際には2つの契約を1社が行うことで、契約の手間が少なくなる一方で、契約の内容としては分離発注とは変わらないのが実態です。しかし設計と工事が同じ会社が行うため、設計段階から工事見積の具体的金額の協議が可能です(後述の設計施工分離発注の場合は設計が完了してからでないと具体的工事金額算出できないため全体工程が短縮できるメリットがあります)。専門的な設計チームと施工チームが一体的に働くため建て主は担当窓口とのやり取りのみに集中できることもメリットとなります。一方でその簡略化された体制により建て主は専門家集団となる設計施工会社の業務内容の適正を総合的に独自に判断する必要があります。すべての判断責任が建て主に集中するため、「信頼したい会社」であることが重要な発注基準だと思います。

​図:設計施工一括方式の体制図

4-4 設計施工分離発注方式について(従来方式)

建設業法は昭和24年、建築基準法と建築士法は昭和25年(1950年)に定められた法律です。国民の安全を確保する建物とその建物が適正な工事により建設されるために制定されました。在来工法が中心の時代に、より高い品質で住宅供給を可能とする方式として建築士と建設業を分けて発注する方式を基本としています。従来からの設計者と施工者が協力してよい建築物を作り上げる方式が設計施工分離発注方式となります。

​図:設計施工分離発注方式の契約体系図

この方式では建て主は設計監理契約を設計事務所と交わし、自身の理想となる家づくりの内容を整理します。その整理された内容により設計図面をとりまとめ、適正価格で工事ができる施工会社を探すことになります。家づくりの内容と工事価格が釣り合わない場合は設計事務所を通じ調整設計を行い、見積調整を図ります。

​図:設計段階の業務

工事会社が見積を完了し、建て主が工事契約を交わした後に現場が始まります。設計監理契約の監理契約部分により設計事務所は設計した内容と現場の整合を確認し、現場からの質疑や悩みに対して応えていきます。施工会社は工事請負契約により設計図書の内容に整合するように現場を進め、工事内容の質疑があれば設計事務所と確認し、管理・職人等の手配などを行います。建て主は設計事務所の専門的な監理業務の協力により、独自に判断する必要はなくなります。建築士法により監理をする建築士は施工会社が設計図(建て主との契約内容)に整合しない工事をしている場合は指摘し是正させる業務があり、従わない場合は建て主へ報告することが義務付けられています。また建て主は通常であれば請負工事契約書に一定のペナルティを施工会社に負わせたり、解約をさせたりすることができるようになっています。こうした3つ巴のバランスにより、建て主の希望する家を協力して作っていく分離発注方式が、従来方式として今でも存在します。

​図:施工段階の業務

設計施工分離発注方式の隠れたメリットとして、施工会社に極端に楽をさせにくい体制があげられます。施工会社は建て主と契約している設計事務所により、難しいことについては相談する相手がいるため対応しやすい反面、設計事務所に監理されているため建て主を説得して(高性能で)安い材料への現場での置換がほとんどできない体制が組めます。これは設計事務所が施工会社が見積書以上に利益を上げることにメリットが無く、むしろ自身の計画した家がより良いものとして仕上がることを望むためです。

4-5 まとめ

設計と施工は本来別々の業務です。しかし時代のもつスピード感や、手間のかからない段取りなど、現代い求められる要望から設計施工一括発注方式が発展しました。工事の相見積もりや施工者探しを要する分離発注より一括発注方式が多いのは、世の中の単位時間の経済価値が高まっているからでしょう。1か月、あるいは2カ月程度見積りを集める時間を要し、その後施工者を決める手間により建て主が不安感を覚えることも少なくないでしょう。分離発注方式はそういった不確実な予算組時期を建築士と乗り越えて、世界に一つだけの家づくりに挑戦する必要があります。
一括発注方式は、施工会社に設計実務を務める建築士が所属しているかで経費率も大きく異なります。コストが明瞭となる分、実行予算が見えにくいということがデメリットとしてあげられます。また前述したように建て主が独りで設計者とう施工者を取りまとめる設計施工会社と渡り歩いていかないといけません。

​図:発注方式のメリットデメリット表

4-6 TAG建築デザイン事務所からのメッセージ

家づくりにはいずれにせよ手間がかかります。その度合いは発注方式に限らず、委託する設計事務所や請け負う施工会社によっても差異があります。「時間や手間VSコスト」のように単純に言い切れないものです。このコラムを読まれた方は以下のことを考えてみてください。
自分の家づくりに協力してくれる専門家の人生を契約*で独占する
*計画内容や規模による)
家づくりには少なからず1年程度の時間を要するものです。また決して一人では作り上げることはできません。多くの方の協力を得て完成します。一括発注でも分離発注でもどちらも良い仕事をされる方が大勢います。重要なのは「1年以上の時間をかけてみんなで協力して家を完成させる」ということです。その1年を建て主の素敵な1年にしていただくため、人生の一角を成すパートナー探しと手法として発注方式を選んでください。そして、その1年は家づくりは関わる人達の人生づくりにもなっていることを考えてもらえると幸いです。

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